コンサルタントは仕事の様々な場面において、説明することを求められます。
口頭での説明力ももちろんですが、説明を捕捉するための資料づくりも非常に大切です。
一般的に、パワーポイントを用いて資料を作成する機会が多いでしょう。
そこでこの記事では、パワーポイントを使った資料作りについて、意識すべきポイントや実際の作り方などを詳しく解説していきます。
目次
コンサルタントにパワーポイントスキルは不可欠
コンサルタントは主にクライアントに説明をする時などに、パワーポイントを活用するのが一般的です。
そのパワーポイントを使いこなすスキルには、以下の2つがあります。
プレゼンテーション能力
1つ目がパワーポイントを元にして説明をするプレゼンテーション能力です。
コンサルタントは、上司やクライアントからの納得を得ることができなければ、プロジェクトを前に進めることができません。
そのため、プレゼンテーション能力は非常に重要なスキルとなります。
また、新規開拓のために営業に出かける場合にも、プレゼンテーション能力は重要です。
ドキュメンテーション能力
2つ目がパワーポイントの資料を作る能力です。
この能力を「ドキュメンテーション能力」と言います。
実は、プレゼンテーション能力以上に、ドキュメンテーション能力が重要です。
というのは、誰もが一目で理解できる質の高い資料を作ることができれば、コンサルタントが説明をするという工数を省略することができるためです。
また、プレゼンテーションの場に出席できなかった人にも、内容を伝えることができます。
ハイパフォーマーなコンサルタントは、ドキュメンテーション能力が優れているという方が多くいます。
コンサルタントのパワーポイントNG例
作成されたパワーポイントの資料だけでも、ある程度コンサルタントの仕事の能力は見極めることができます。
質の悪いパワーポイントならば、それだけで「できないコンサルタント」という烙印を押されてしまいかねません。
そこで、評価が下がりがちなパワーポイントの特徴について、いくつか紹介します。
口頭での補足ありきのパワーポイント
口頭での補足説明があって初めて意味が理解できるようなパワーポイントは、NG例の一例です。
そのようなパワーポイントは、話し手にとって都合よく作られているだけで、聞き手のことは考えられていません。
例えば、グラフなどの図表データだけを載せているような場合です。
この場合、読み手によって解釈が分かれることがあります。
プレゼンターと同じ解釈ができれば問題ありませんが、そうでない場合には、余計なストレスを抱えながらプレゼンテーションを聞かなければなりません。
解釈の祖語を生まないためにも、口頭での説明を前提にしたパワーポイントは作らないようにしましょう。
また、プレゼンテーションの場に参加できなかった人が理解できないというデメリットもあります。
ページ数が多すぎるパワーポイント
見ただけでプレゼンテーションの内容が理解できる資料を作るにあたって、ある程度ページ数が増えてしまうのは仕方ありません。
しかし、ページ数が多くなりすぎるのも注意が必要です。
できるだけ簡潔にして、なおかつ分かりやすいパワーポイントが作れるかということが、コンサルタントには求められています。
文字数が多すぎるパワーポイント
パワーポイントの1スライドに文字を詰め込みすぎるのもNGです。
一目で理解できるパワーポイントを作ろうと、まるで台本のようなパワーポイントを作ってしまうケースもありますが、読みづらくて仕方がありません。
うまく箇条書きを利用したり、図を活用したりしながら、余計な文字を省き、構造化してパワーポイントを作成していくことが大切です。
アニメーション過多のパワーポイント
実際のプレゼンテーションを盛り上げるために、アニメーションをふんだんに搭載するケースもあります。
しかし、そのようなパワーポイントも望ましくありません。
アニメーションは結局、口頭での説明ありきの効果であるためです。
また、アニメーションを利用することによって、資料を印刷した際に見えづらくなる可能性があるといった難点もあります。
その場合、パワーポイントの資料を見る際のストレスを与えることになります。
コンサルタントのパワーポイント作りで意識すべきポイント
実際にパワーポイントの資料を作る際に意識すべきポイントを5つ紹介します。
最初に述べるべきは結論
資料作りでは、冒頭に結論を持ってくることが重要です。
映画やドラマのように、「どんな結論が待っているの?」というワクワク感を与える必要はありません。
むしろ、結論が分からないまま話を進められると、聞き手や読み手にとっては大きなストレスになります。
最初にハッキリと結論(自分の意見)を伝え、その後に理由や具体例、想定される反対意見なども交えながら、説明するという資料作りを心がけましょう。
「まずは結論から入る」と型を決めるだけでも、パワーポイント作りの工数を1つ省略することができ、余ったリソースをよりよい資料作りのために使うことができるようになります。
「伝える」ためのではなく「伝わる」ための資料作り
コンサルタントが特に意識すべきことは、「伝わる」ための資料を作るということです。
コンサルタントにとっての説明は、単にこなせばいいというものではありません。
相手の納得を得て、初めて意味を為すものです。
そのため、「伝える」という自分主体の考え方ではなく、「伝わる」という相手主体の考え方でパワーポイントを作成することが求められます。
文章型よりも構造化型
上述の通り、文字数の多い文章ばかりのパワーポイント資料は好まれません。
どれだけ正確で素晴らしい内容が書かれていても、それが上手に伝わらないためです。
箇条書きを活用したり、図表にまとめたりすることで構造化することが求められます。
図表の活用
分かりやすいパワーポイントを作りにあたって、図表の活用は非常に重要です。
例えば、以下の文章があるとします。
ロシアワールドカップで、グループHに入った日本代表はコロンビア、セネガル、ポーランドと同組になりました。
それぞれFIFAランキングは、16位、27位、8位といずれも61位の
日本よりも上位なので、グループリーグ突破は厳しいことが想定されます。
この文章を表形式にすると、以下のように整理できます。
国名 | FIFAランキング |
ポーランド | 8位 |
コロンビア | 16位 |
セネガル | 27位 |
日本 | 61位 |
このようにまとめるだけで、日本が同グループ内で圧倒的に格下であるということは、一目瞭然になります。
このほかにも、
- 棒グラフ
- 折れ線グラフ
- 円グラフ
などを、データの性質に合わせてうまく活用していくだけで、資料の分かりやすさは格段にアップしていくのです。
細かい部分の気配りも忘れず
パワーポイントの資料を作る際には、聞き手や読み手ができるだけ余計なストレスを抱えることがないように、細かい気配りをすることも大切です。
例えば、
- 文字色
- フォント
を変えたりすることによって、「ここが重要」ということを視覚的に示すのはその一例です。
ほかにも、スライドごとにページ数を割り振るといった気配りもあるでしょう。
ページ数を割り振っておくことで、プレゼンテーションの際に「何ページをご覧ください」といったアナウンスができるようになります。
細かな気配りにこだわりすぎても仕方がありませんが、できる気配りをしておくことで、自分や関係者がその後に受ける様々なストレスを予防することが可能になるのです。
「勝負の神様は細部に宿る」とも言います。
細部にわたる気配りがあったからこそ、上司やクライアントの承認や納得を得ることができるようになるかもしれません。
コンサルタントのパワーポイントの作り方
続いて、実際のパワーポイントの資料の作り方について説明します。
結論から言えば、いきなり資料作りに着手するというのはNGです。
それは、地図も持たずに旅に出かけるのと同じです。
当然、最短距離を歩むことなどできず、場合によっては逆方向に進んでしまうこともあるでしょう。
実際にパワーポイントを作る際には、
- 資料作成の目的を考える
- 説明相手や説明時間を確認する
- ストーリーラインを考える
- 絵コンテを作成する
- パワーポイントを作成する
- 同僚から確認・修正してもらう
の6つのステップで進めていくのがおすすめです。
資料作成の目的を考える
最優先で考えるべきことは、資料作成の目的です。
単に情報を周知させるためだけの重要度が低いものなのか、それともプロジェクトの実行に直結するような重要度の高いものなのか。
その目的や重要度によって、どれだけ力を入れてドキュメンテーションすべきなのかも変わってきます。
パワーポイントの資料を作ること以外にも、コンサルタントがすべき仕事は多くあります。
それほど重要度が高くないことに、時間的リソースや脳のリソースを使いすぎるのも賢明ではありません。
最短時間での資料完成を目指す上で、この「目的を考える」というステップは非常に重要です。
説明相手や説明時間を確認する
パワーポイントの資料を用いて行うプレゼンテーションを誰に対して、どのくらいの時間でするのか把握することも大切です。
例えば、10分しか時間がないのに、60分相当の分量で資料を作っても意味がありません。
与えられた条件に即した資料作りが求められます。
「まず作ってみてから、後で加減する」という方法もありますが、場合によっては、時間をかけて作成した部分をすべて削らなければならないようなこともあるので、あまりおすすめできません。
ストーリーラインを考える
次のステップも、パワーポイント作りではありません。
まずは、大枠となるストーリーラインを考えます。
本やブログで言えば、見出しのようなものです。
ある程度ストーリーラインが完成したら、それぞれのパワーポイントにかける時間も概算して出しておきましょう。
すると、余計な情報を詰め込みすぎる心配がなくなり、簡潔な資料作りへとつながっていきます。
絵コンテを作成する
絵コンテの作成は、ストーリーラインを考えるのと同時に行ってもOKです。
頭の中で考えるだけではなく、実際に手を動かしてみることで、より考えを深めることができます。
絵コンテ自体は、誰に見せるわけでもないので、ラフに書いて構いません。
パワーポイントを作成する
大枠が決まれば、いよいよプレゼンテーションの作成です。
予め考案したストーリーラインに沿って、できるだけ簡潔に、しかし漏れなく情報を落とし込むことを意識しましょう。
強調のための文字色の変更や簡単な装飾などは、最後の仕上げの際に編集すればOKです。
同僚から確認・修正してもらう
パワーポイント資料は「相手に伝わる」ために作成するものだと説明しました。
しかし、自分一人だけで作成していると、どうしても「伝える」ための資料になりがちです。
自分以外の複数の他者にも目を通してもらうことが大切です。
そこで得たフィードバックを参考にして、さらに資料の質を高めていきましょう。
また、上司に確認をもらう際には、一定の段階ごとに細かく確認をもらうのがおすすめです。
すべて完成した後に確認をもらい、「やり直し」と言われてしまえば、膨大な無駄が発生します。
コンサルタントのパワーポイント【実例を紹介】
最後に、官公庁の公式HPで紹介されている各コンサルティング会社のパワーポイントの実例を紹介します。
アクセンチュア
最初に紹介するのは、アクセンチュアの「平成30年度石油・ガス供給等に係る保安対策調査等事業 保安力の維持・向上を目的とする 基礎調査 報告書」という資料です。
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000284.pdf
このパワーポイントは、経済産業省のHPで掲載されています。
分量は100ページ以上と非常に多いですが、文章は少なく、図表を積極的に活用しているため、かなり理解しやすいのが特徴です。
一定のルールで文字色も変更されているため、余計なストレスを感じずに内容を理解することができます。
デロイトトーマツ
続いて紹介するのは、デロイトトーマツの「平成29年度補正 IoTを活用した新市場創出促進事業(IoT活用おもてなし実証事業) 事業報告書」という資料です。
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H29FY/010171.pdf
このパワーポイントは、経済産業省のHPで掲載されています。
アクセンチュアのパワーポイントと比較して、やや文章量が多くなっていますが、うまく構造化してまとめられています。
情報の重要さに応じて、文字サイズも変更されており、文字量が多くても読みやすくなっています。
三菱総合研究所
最後に紹介するのは、三菱総合研究所の「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合 中間報告(案)」という資料です
https://www.soumu.go.jp/main_content/000311178.pdf
このパワーポイントは、総務省のHPで掲載されています。
グラフを多用して、データに説得力を持たせていることが特徴的です。
加えて、単にグラフを掲載するだけではなく、矢印などを使って説明を補強しています。
コンサルタントはパワーポイントスキルを高めよう
この記事では、コンサルタントにとって大切なスキルであるパワーポイントについて、詳しく説明をしました。
分かりやすいパワーポイントが作れれば、それだけでプロジェクトを一気に進行させられる可能性もあります。
そのため、コンサルタントは高いレベルでパワーポイントスキルを身に着けておくべきです。
パワーポイントスキルが高まると、自ずとドキュメンテーション能力、プレゼンテーション能力も向上していき、仕事のパフォーマンスや自分の市場価値も上昇します。
パワーポイントスキルを高めるためには、実際にコンサルタントとして働いていた方のセミナーや勉強会への参加がおすすめです。
セミナーや勉強会に参加することで、実践で使える生きたパワーポイントスキルを習得することができます。
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