コンサルティングファームへの就職を目指す上で、ケース面接は越えなければならない関門です。
それまでどれだけ高評価を得ていたとしても、ケース面接で不出来であれば内定を勝ち取るのは難しいでしょう。
コンサルティングファームは成長性や人間性よりも能力を重視しているため、その実力を測ることができるケース面接に重きが置かれているのです。
この記事では、ケース面接でも特にテーマにされることが多い、売上の向上をテーマにした出題例をもとに、思考のアプローチや注意点について解説していきます。
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売上向上系ケース面接の出題例
売上の向上をテーマにしたケース面接は、非常に多くのコンサルティングファームで行われています。
その具体的な出題例を、いくつか紹介するので参考にしてください。
- 個人経営のクリーニング店の売上を2倍にする方法を考えてください
- サイゼリヤの売上を2倍にする方法を考えてください
- カフェチェーン店の売上を5年で2倍にする方法を考えてください
- 楽天モバイルの売上を2倍にする方法を考えてください
一般的には「売上を2倍に」というテーマが多く出題される傾向にあります。
ただ、出題内容は非常に多岐に渡るため、幅広いチャネルから情報を収集しておくことが大切です。
売上向上系ケース面接の解き方
ケース面接は「では、これからケース面接を始めます」というような段取りで始まるとは限りません。
面接官「A君は何が趣味なの?」
A「僕はサッカーが好きです!大学でもサッカーサークルに所属しています」
面接官「そうなんだ。サークルのユニフォームはどこのメーカーなの?」
A「アディダスです」
面接官「アディダスなんだ。それじゃさ、アディダスのサッカー用品売上を2倍にするための方法を教えてよ」
というように、雑談だと思いきやいきなりケース面接に突入していくということもあります。
かなり面食らってしまうこともあるでしょうが、ケース面接に突入した以上は、与えられた課題を解かなければなりません。
もちろん制限時間は限られていますが、ここで慌てていきなり施策を考えるというのはNGです。
まずは以下の通り、しっかりと段階を踏んで思考するようにしましょう。
提案して終わりではなく、その後も面接官とのディスカッションは続いていきます。
闇雲に考えた施策であれば、その後のやりとりで返答に窮してしまうはずです。
しかし、しっかりと流れに沿って思考できていれば、その後のやり取りもスムーズに進め、高評価を得ることができるでしょう。
STEP①前提の確認
まずは与えられたテーマに対して、しっかりと前提条件を整理するようにしましょう。
例えば上記のように「アディダスのサッカー用品売上を2倍にする」という施策を考える場合、まだ曖昧な部分がありますね。
具体的には
- 期日(いつまで)
- 語句の意味(売上は売上高か、それとも売上総利益か)
といった点です。
例えば期日の指定を曖昧にしたまま施策を講じた場合、極論すれば50年後に売上が倍になるような施策を考えてしまうかもしれません。
もちろんそれはNGです。
具体的に前提を確定しておかないと大きく議論がぶれてしまう可能性がある点については、しっかり確認しておくようにしましょう。
ただし、あまり詳細な条件を指定しすぎるのもダメです。
例えば「本当にサッカー用品だけですか?」「想定されている店舗は、駅前ですか?それとも郊外ですか?」といったような内容が該当します。
特に指定がなかった分については、自分のイマジネーションで話を進めていくということも大切です。
ケース面接は時間も限られていますので、前提の確認だけにあまり時間を使いすぎてもいけません。
大枠が確定したら次の思考段階へと進めていきましょう。
STEP②売上の構成要素の因数分解
前提が整理できたら、売上を構成する要素を分解していきます。
この作業を「因数分解」といい、ケース面接では肝となる作業です。
的確な因数分解を行うことで、その後の思考の質もグッと高まっていきます。
サッカー用品を因数分解すると、以下のような要素が抽出されます。
- シューズの売上
- ウェアの売上
- ソックスの売上
- ケガ防止関連用品の売上
- 応援グッズの売上
- その他
それぞれの要素は、さらに因数分解することも可能です。
例えばウェアはシーズンごとに、シューズはスパイクとトレーニングシューズといったように、分解することができます。
この際、MECEに思考することが非常に大切です。
MECEに思考できることは、コンサルタントとして最低限備えておきたいスキルとも言われています。
特に漏れがある場合には、それが重大な欠陥にもなりかねません。
ロジックツリーなどのフレームワークをしっかりと習得し、MECEに思考する習慣を確立しておいてください。
STEP③肝となる要素の特定(課題の特定)
要素の分解が済んだら、売上を向上させていく上で肝となる要素を特定していきます。
正解はありませんが、特に変動幅が大きく、売上向上に直結しやすい要素を選んでいきましょう。
例えば次のような考え方があります。
- 近年、ケガを負ってしまうことにより、満足にプレイできなくなる選手が増えてきている
- そのケガの大きな原因となっているのが、蓄積した疲労である
- プロチームならまだしも、アマチュアチームや部活レベルでは、トレーナーが在籍しておらず、コンディション管理は自分で行わなければならない
- 着るだけで疲労を軽減することができる機能を搭載したウェアがあれば、ケガ防止とパフォーマンスの向上につながる
- プレイヤー個々により体の特性は違うので、オーダーメイドでウェアを製作する
といったような具合で、高機能を搭載したウェアを販売するというのが一例です。
また、それを消費者に「欲しい」と思わせるプロモーションも必要になります。
そのためには、インフルエンサーマーケティングや指定団体(とある高校のサッカー部など)への無償提供といったような方法も考えられるでしょう。
STEP④施策に対して想定されるデメリットの検証
世の中のすべての物事にはメリットとデメリットがあります。
それはケース面接においても例外ではありません。
あなたが考えた施策にどれだけ有効性があったとしても、その裏には必ずデメリットがあるはずです。
新規製品を開発するという場合にはその開発コストがかかります。
既存製品のプロモーションを強化するという場合には、その広告コストがかかったり、他の製品のプロモーションが弱くなったりするという懸念があります。
考えた施策のデメリットについては、ケース面接を進める中で面接官から言及されることでしょう。
その際に、「そのデメリットがあっても上回るだけのメリットがある」ということを、具体的な理由を添えて説明することが大切です。
いずれにせよ、どれだけ有効性が高いアイディアであっても、必ずデメリットは存在するということは頭に入れておく必要があります。
それが「ケース面接には正解がない」と言われる理由です。
だからこそ、面接官に提案する際には堂々とした姿勢で、自信を持っておくようにしましょう。
ケース面接で売上向上施策を考える際のポイント
続いて、ケース面接において売上向上の施策を考える際のポイントを解説します。
本当に考えるべきは売上高ではなく売上総利益(粗利)
「売上を増やせ」と言われた場合、それを額面通りに受け取って単に売上高を増やすことだけを考えるのであれば、非常に簡単です。
実際に、売る量を増やしてしまえばそれだけで売上高は増えていきます。
しかしコンサルタントを行う以上は、コストについても考慮しなければなりません。
例え売上高が増えたとしても、コストの上昇がそれを上回ってしまえば、赤字が膨らむばかりで愚策です。
そのため、売上高からコスト差し引いた「売上総利益(粗利)」を思考するようにしましょう。
ケース面接において「売上を倍にせよ」という出題がなされた場合には、不採算部門を切り捨てるというのも1つの手です。
総売上高が減ってしまったとしても、それ以上にコストの削減が見られれば、結果的に売上総利益は増加することになります。
評価ポイントは構造思考力と課題の特定
ケース面接中は、すべての言動が評価の対象です。
その中でも特に重視されるポイントを挙げると、構造思考力と課題の特定の2点になります。
特に適切な課題が特定できるかという点は、コンサルタントとしての資質を大きく左右する点でもあります。
本質的ではない課題についての施策を考えてしまった場合には、効果を得ることは決してできないでしょう。
むしろ、思考上の様々な無駄が生じてしまうはずです。
コンサルタントは特に時間に追われる職業であり、1分たりとも無駄な思考や無駄な作業はしないことが望まれます。
そのため、ケース面接において本質的ではない課題についての施策を考えてしまった場合、当然高評価は得られません。
まずは日ごろから、物事のボトルネックを正しく見極める目を養っておくようにしましょう。
メモも構造的に書くことが重要
ケース面接中は、自分の思考を整理するためにメモをとります。
このメモも、単に思いついたことを殴り書きするのではなく、なるべく構造的に書くよう意識してください。
乱雑に書いたメモは、後で見直した時に必ずあなた自身も混乱に陥れてしまいます。
しかし構造的に書かれていれば、それは思考や提案の際に大きな武器になるはずです。
もちろん、メモの内容や書き方についても評価の対象とされています。
分かりやすいメモが書かれていれば、情報を伝達する際に「説明」という余計な一工程を省略することができ、スムーズに仕事を進めることができるようになります。
単に説明が省けるというだけではなく、相手の時間を奪うこともなくなり、付随して様々な無駄を省けるようになるのです。
メモの取り方1つでも、仕事ができる人間か、そうでない人間かは判断できます。
ケース面接中は時間が非常に短く、焦る気持ちも出てくると思いますが、「急いては事を仕損じる」です。
なるべく丁寧に、構造的にメモすることを心がけましょう。
前提条件は大まかでいい
ケース面接の最初のステップとして、テーマについての前提条件はしっかりと確認すべきということを説明しました。
しかし、既に述べた通り、あまり細かすぎるところは気にする必要がありません。
ケース面接の本質は「課題の解決策を考える」ということですから、それに特に影響がない事項については、ある程度自分の裁量でイメージしてOKです。
コンサルタントとしては、情報の取捨選択能力も問われます。
特に必要ではない情報をバッサリと切り捨てられるということも、高評価を得るための1つの方法です。
面接官のアドバイスを元に意見をブラッシュアップさせる
ケース面接は、自分で思考をして施策を提案したら、それで終了ではありません。
あなたが提案した施策に対しては、必ず面接官から意見や質問がぶつけられます。
そこからあなたと面接官の間でのディスカッションが始まっていくのです。
ケース面接の本番はむしろ、このディスカッションにあると言っても過言ではありません。
面接官のアドバイスをもとにして、さらに施策をブラッシュアップさせていく必要があります。
もちろん、面接官の意見をすべて完全に受け入れるという必要はありません。
その場合はむしろ「自分の意見が持てない」という烙印を押されてしまう可能性があります。
自分の意図とは違う指摘やアドバイスを受けた場合には、それを正して共通認識を創り上げるというのも、コンサルタントに求められるスキルの1つです。
模範解答よりも独自性のある回答が好まれる
ケース面接に臨む前には、徹底的に練習しなければなりません。
しかし、練習しすぎることで大きなデメリットも生まれる可能性があります。
それが「教科書通りの回答になってしまう」ということです。
正直面接官は、他の志望者と同じような回答は聞き飽きています。
コンサルティングファームの厳しい競争を勝ち抜くためには、他の志望者との差別化をしなければなりません。
そこで教科書通りの回答をしていては、一定の評価を得ることができても、突き抜けることはできないでしょう。
何も突拍子のないことを言わなければならないということではないので、安心してください。
自分の経験や趣向などに合わせて、また教科書にはない自分独自の視点をもって施策を考えればOKです。
それだけで回答が独自性を帯びてきます。
ケース面接で売り上げ向上関連のお題が出題された際の対策まとめ
ケース面接においては、売上の向上施策を考える問題がよく出題されます。
制限時間も非常に短く、焦ってしまう人も多くいますが、本記事で紹介したステップを原則守りながら思考・提案することを心がけてください。
ケース面接は付け焼刃の対応で突破できるほど甘いものではありません。
準備をしていないことは、百戦錬磨の面接官にはすぐに見抜かれてしまいます。
そのため、十分に過去問や例題を解くなど、トレーニングを積んだうえでケース面接に臨むようにしてください。
逆にしっかりと準備をしておき、独自性のある回答ができれば高評価を得ることは十分可能です。
面接における他の質問で手ごたえがなかった場合でも、一気に評価を覆すこともできるでしょう。
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